グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

ライフ(命・生活・人生)を考え、生活をつくる家庭科はとてもおもしろい

2019.4.24

インタビュアー:広報室

今回は、教育学部家政教育コースの吉本 敏子(よしもと としこ)教授にインタビュー取材を行いました。

吉本先生の写真

-まずは先生の専門分野・研究テーマを教えてください。

吉本専門分野は家庭科教育と消費者教育です。
現在は「生活場面で実践できる力の実態と課題」というテーマで共同研究を行っていて、家庭科という教科で学んだことが本当に生活の中で生かせているのか、ということを研究しています。この研究を始めたのはもう10年近くも前のことです。知識・技能を活用して実際の生活の場面で生かせる力をつけようというのが最近改訂された新学習指導要領のねらいですので、結果的に少し先取りした研究になりました。
新学習指導要領で求められている基礎力としての知識・技能は、単に知っている、何かができるということではなく、それらを活用できるレベルまで深めた知識・技能です。「縫う」という技能の場合には、「なみ縫い」や「半返し縫い」ができるとしても、例えば服がほつれて縫おうというときに、どの縫い方が適切か自分で判断して使えるレベルまで知識・技能を深める必要があります。「野菜をゆでる」という時には、今の小学校の教科書(開隆堂)では、水からゆでるゆで方、お湯からゆでるゆで方として「人参」「ブロッコリー」「キャベツ」の3種類の野菜を扱っていますが、それ以外の野菜に出会った時に、どのゆで方を当てはめたらよいか判断してゆでられるようになることが求められています。
私が行っている共同研究は、こうした力がどれだけ身についているかを明らかにする研究です。そこで、中学1年生、高校1年生、大学1年生を対象にアンケート調査を実施し、各学校段階でどの程度力がついているかをみました。私が主に担当した「消費生活・環境」の領域では、「インターネットで靴を買う」という課題から、基礎力(靴の購入金額を計算するために必要な情報を読み取る力)、思考力(購入した靴が少し小さかった場合の問題を解決する力)や、実践力(靴のまとめ買いのチャンスにどのような意思決定をするかという消費生活に関する価値観)を明らかにしました。
結論を言いますと、衣食住等の領域・内容によっては十分な力が育っていないと判断されました。必要な力が身についていないのであれば、教育方法を変えていかなくてはなりません。今までの教育はどうだったのかを見直す必要があります。

-昨年度には家政教育コースの卒論発表会を拝見しました。吉本先生の研究室の学生はどんな研究をしてみえるのですか。

吉本先生、研究室にて

吉本私の研究室は毎年とても研究テーマの幅が広いです。例えば、平成30年度に卒業した学生たちの卒論のテーマは「痩身願望から見るサプリメント利用の実態」「振り込め詐欺の実態と予防」「ペットの終生飼養」です。
私の研究室では家庭科教育関連、消費者教育関連で研究をしたいという学生を募集しますが、学生たちが自分でテーマを決めるので結果的に研究テーマがとても幅広くなります。「地上デジタル放送への移行と消費者問題」というテーマで地デジ化の進行とともに論文を書いた学生もいます。「食べることについての現代のマナーとモラル」というテーマの論文では、例えば、ソフトクリームを観光地で買って歩きながら食べるというのは雰囲気で許容されるけれども歩きながらお弁当を食べたりはしないなど、食事をする場所や仕方について、どういう場合にどこまで許容されるかを研究した学生もいました。また、「衣生活のTPOとジーンズの着用」という研究をした学生は、ジーンズはどういう時に履けるのかを調査しました。自分が履くかどうかと人が履いているのを見てどう思うかはまた違いますよね。そして、その学生は家庭科の授業で衣生活のTPOをどのように扱えばいいのかを考えて提案しました。「外国人観光客誘致による伊勢志摩地方活性化への提案」というテーマで、伊勢志摩の観光地を全部めぐって何が問題なのかを探り、どうしたら活性化するかから観光客の国籍によってどんなサービスが求められているのかに至るまで提案した学生もいます。「個人情報保護と消費者教育~絵本の作製を通して~」をテーマに研究し、副産物として絵本「みみたんくれたのだあれ?」作製した学生もいます。面白い研究がいろいろあるんですよ。

教材

学生の考えている研究したいことを、きちんと論文にまとめられるように指導するのはとても大変ですが、卒論指導にもエネルギーを注いでいます。

-吉本先生が指導している教員を目指す学生たちには、どんな教員になってほしいですか。

吉本今の教育現場には本当にいろいろな背景を持った子どもたちがいます。教師は深入りしたくてもできない部分がありますので、その分懐深く子どもを受け止めてあげられるような教師、心が通じ合える教師になってほしいと思います。何かがあったときに、信頼関係がない人のところには子どもは助けを求めないし、教師も受け止められない。子どもが安心して学校で学べるような体制づくりができる教師になってほしいですね。そのためには、コミュニケーション力や人間性はとても大事だと思っています。もちろん授業はきちんとやってほしいですが、授業の技術は後からでも身に着けられると思いますので、大学では勉強以外にもいろいろな経験をしてほしいです。

-今後の目標は

吉本まずは今やっている家庭科教育の研究をきちんとまとめたいと思います。その成果を基に、生活に生かす力を育てるために、何をどう教えたらいいか、授業の内容と方法を繋げながら面白い授業づくりをしていきたいです。

研究者情報


吉本先生の写真

教育学部 家政教育コース

教授 吉本 敏子(Toshiko Yoshimoto)

専門分野:家庭科教育 消費者教育

現在の研究課題:生活場面で実践できる力の実態と課題

【参考】

教育学部HP  https://www.edu.mie-u.ac.jp/

教員紹介ページ(吉本 敏子) http://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/2169.html