感染症と抗菌薬~NDB(ナショナルデータベース)による分析~

2018.7.24

インタビュアー:広報室

今回は医学部附属病院 感染制御部 山崎 大輔(やまさき だいすけ)薬剤師にインタビュー取材を行いました。
感染制御部部長の田辺 正樹(たなべ まさき)医師にもご同席いただきました。

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-普段はどのような仕事をされているのですか。

山崎午前中は薬剤部で仕事をしており、主に救命救急・総合集中治療センター(ICU)で薬剤の管理や注射薬の調製、また、カンファレンスへの出席や、カルテチェックをして薬剤が適切に投与されているかどうかを確認しています。午後からは感染制御部で抗菌薬(ばい菌をやっつける薬)が適切に使われているかどうか、カルテを見て、おかしいと感じたら感染症専門の医師に相談をしています。

-仕事としては、薬の管理をされているのでしょうか。

山崎薬剤師の仕事には薬の管理もありますが、その他にも色々な仕事があります。調剤室では、医師の処方箋をもとに注射薬・内服薬の払い出しを行っている一方で、病棟で勤務している薬剤師は各自の担当病棟で薬が適切に使われているかの確認、また入院患者さんに対する薬剤の説明などを行っています。
私が勤務しているICUは重症な患者さんが多いので、患者さんに服薬指導をするというよりは、現在の投与量で良いのか、薬剤の変更が必要かなどを担当医と話し合ったり、副作用の確認をしています。
田辺感染制御部は、院内感染対策や病院全体の抗菌薬使用状況の確認をしています。抗菌薬には色々な種類があるのですが、多くの菌に効果のある薬(広域抗菌薬)は大切に使用する必要があるため、適切に抗菌薬が使用されているかどうかを確認するのが薬剤師の役割になっています。

-適切に抗菌薬が使用されているのか、どのように確認されているのですか。

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山崎カルテを見て確認しています。例えば、薬を多く投与しすぎると副作用が出ることもあるので、肝臓・腎臓の機能が悪くなってきていないか、薬の用量が正しいかどうかを確認しています。

-患者さんの所にも行かれるのでしょうか。

山崎私たちは病院全体(685床)を対象としているので、直接患者さんのところに薬の説明に行くことはありません。まずカルテ上で確認し、気になるところがあれば感染症専門の医師と一緒に、チームで患者さんの状態を診に行くことはあります。
田辺現在の医療は外科、内科、耳鼻科、眼科など細分化されています。感染症は全ての診療科で発生しますが、各診療科に感染症に強い先生がいる訳ではありません。このようなチーム活動を通じて、病院全体の感染症診療のレベルが上がることが目標です。

-抗菌化学療法を専門にされているそうですが、それはどのような療法なのでしょうか。

山崎感染症の治療には、外科的に感染している部分を切除する方法と薬で治す方法があります。この薬(抗菌薬)で感染症を治す治療を抗菌化学療法と言います。抗菌化学療法を専門とする薬剤師として、抗菌薬の用法・用量や副作用の確認を行っています。

-山崎さんは"IDWeek International Investigator Award"を受賞されましたが、それはどのような賞なのですか。

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山崎IDWeekというのは米国の感染症関連の4学会(感染症学会、病院疫学学会、小児感染症学会、HIV学会)が集まった年1回の学会のことです。この賞(International Investigator Award)は、アメリカとカナダ以外から発表する研究者を対象に、優秀な研究発表に贈られるものです。

-どのような内容のものを学会に提出されたのでしょうか。

山崎抗菌薬の効かない菌(耐性菌)が増えてきており、抗菌薬を適切に使うことが世界的に求められてきていますが、日本全体で抗菌薬がどれだけ使われているかあまり分かっていませんでした。そこで、厚生労働省のデータベースを利用させてもらって分析をしました。
田辺今までは抗菌薬の販売量で評価されていましたが、販売量では誰に使ったのかがわかりません。そこで、レセプト(患者が受けた保険診療の明細書)のデータベース、すなわちナショナルデータベース(NDB)を使って年齢階級別にどういった抗菌薬が使われているのかを発表しました。日本の様に詳細な医療データを持っている国は少ないので、世界的にも素晴らしい研究ということで評価されました。
山崎NDB自体は色々な研究者が使っているのですが、抗菌薬の使用量を調べるために使ったのは我々が初めてでした。
田辺我々が発表したデータは日本のデータとして、厚生労働省にも使ってもらっています。

-今後の目標を教えてください。

山崎IDWeekで発表した時は都道府県別と年齢階級別しか調べていないので、現在、都道府県より狭い範囲でのデータ分析に取り組んでいます。より狭い地域でデータを分析することで、各地域における抗菌薬の使用状況や地域差を知ることができます。例えば、三重県は、医療圏が4つに分けられるのですが、北部ではこの抗菌薬がよく使われているとか年々増えているなどのデータを分析し見える化することで、それぞれの地域で抗菌薬が適切に使われているかどうかを評価したいと考えています。
田辺日本という大きいフィールドでやろうとするとデータも大きく分析も大変ですが、以前よりも精緻なデータを提示すると共に、適切に抗菌薬が使われているかどうかを評価するための良い指標を導き出すことが大きな目標です。

研究者情報


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医学部附属病院 感染制御部

薬剤師 山崎 大輔(Yamasaki,Daisuke)

専門分野:抗菌化学療法

【参考】

・医学部附属病院 感染制御部HP http://www.medic.mie-u.ac.jp/kansen-seigyo/index.html

・Yamasaki D, Tanabe M, Muraki Y, Kato G, Ohmagari N, Yagi T. The First Report of Japanese Antimicrobial Use Measured by National Database Based on Health Insurance Claims Data (2011-2013): Comparison with Sales Data, and Trend Analysis Stratified by Antimicrobial Category and Age Group. Infection 46(2):207-214 (2018)