次世代型電池開発への挑戦

2015.6.17

インタビュアー:広報室

次世代型電池「リチウム電池」を研究する工学研究科分子素材工学専攻の今西 誠之(いまにし のぶゆき)教授にインタビュー取材を行いました。

top20150604_Rナビインタビュー(今西先生)

-リチウム電池開発をされていると聞きましたが、そもそも研究に興味をもったきっかけは何でしょうか?

今西父が工学部の教員だった影響もあり、理科の中でもとくに化学が好きで、色々な製品の基となる材料、物質をつくることに興味がありました。大学に入ってから、社会に必要不可欠なエネルギーに関連する研究がしたいと思い、電池をテーマにしていた工業電気化学の研究室に入りました。当時はまだリチウム電池は実用化されておらず、研究が盛んになりだした頃で、従来型の電池の研究もたくさん行われていました。それが、91年に世界に先駆けて日本でリチウムイオン電池が発売され、充電できる電池が急激に社会に身近なものとなり、関連研究も急増しました。

インタビュー風景

-電池にも色々種類があると思いますが、リチウム電池と他の電池の違いは何ですか?

今西「軽い」、「小さい」、「電圧が高い」です。他の電池は電圧が約1.5V、でも、リチウム電池なら同じサイズで3~4Vです。車やパソコン、携帯電話など私たちに身近な製品にもリチウムイオン電池が使われています。新しい電池の開発は新しい製品の開発につながります。より軽く、小さく、電圧の高い電池が誕生すれば、私たちの社会生活が大きく変わる可能性があります。電池の開発は特に材料づくりが重要で、材料の基礎研究が果たす役割は非常に重要だと思っています。

-当たり前のように使っていますが、携帯電話がコンパクトになって充電可能になったのは大昔のことではないですね...。すごい社会生活の変化です。先生、「材料づくり」とは何をしているのでしょうか?

インタビュー風景

今西電池とは大きく3つの材料から成り立っています。①正極、②負極、③電解質です。それぞれの材料を様々な物質を組み合わせて作ります。次に、出来上がったものがどんな構造のものなのかを調査します。そして、材料の性質、例えば電気がどの程度流れるかなどを調べ、最後に電池として組み立ててその性能を測定します。この最初の過程にあたる化学物質からの材料づくりが重要です。

-なるほど。3つの材料を化学物質から作るとなると大変な作業ですね。今開発している電池の課題は何ですか?

今西どの材料にも課題がありますが、今一番力を入れているのは負極です。一般に使用されているリチウムイオン電池は負極にリチウムを収容するグラファイトという物質が使われます。この材料があることでリチウムが円滑に電池の正極、負極を行き来することができ、安定した放電・充電を行うことができます。グラファイトという優秀な負極材料が存在したことはとても大きな意味をもっています。ただ、更なる軽量化を目指すには、このグラファイトの限界を超えなければなりません。そこで、グラファイトを使用しないことで軽量化した金属リチウム-空気電池の開発に取り組んでいます。

リチウムイオン空気二次電池1

金属リチウムは還元力が大変強い物質、つまり、電子を外に放出する力が強い物質です。誰彼かまわず触れると反応し、特に電解質と触れるとSEI(Solid Electrolyte Interphase)という層が表面にでき、リチウム金属の溶解析出が円滑に進まなくなることがあります。そのままリチウムの溶解析出を繰り返すことで不均一な析出とそれによる内部短絡が起こり、電気が流れて発熱することで電池が発火してしまう危険があります。この問題を解消するために、ポリマーを負極と電解質の間にいれるなどの工夫を凝らしながら実験を重ねています。リチウム金属が平滑な溶解析出を実現することができれば、ポストリチウムイオン電池の開発が大きく前進します。

-そんなすごい電池が誕生すると製品開発の幅も広がりそうですね!

今西研究の究極の目標としては効率の良いエネルギー社会の実現です。枯渇が心配されている化石燃料の使用を節約するためには、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの普及が必要です。より複雑化するエネルギー需給のバランスを調整する媒体として充電できる電池が活躍できるのでは、と考えています。また、化石燃料の節約が達成されれば二酸化炭素の削減にもつながります。

-最後に未来の研究者にメッセージをどうぞ!

今西化学物質には環境汚染などマイナスなイメージがありますが、その学問の本質は物質(材料)をつくることです。私たちは物質社会(マテリアルワールド)に暮らしています。化学の研究者を目指す学生さんには、物質社会のもっとも基礎となるものを創出する研究者として誇りを持ち、より良いものづくりを目指してほしいと思います。

-先生、本日はありがとうございました。

【参考】
工学部HP http://www.eng.mie-u.ac.jp/index.html
教員紹介ページ(今西誠之) http://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/1859.html
三重大学次世代型電池開発センター http://www.mie-u.ac.jp/research/intro/denchi.html
エネルギー変換化学研究室 (Energy Conversion Chemistry) http://www.energy.chem.mie-u.ac.jp/