It's a Material World!
 ー化学の力で新しい電池を生み出すー

2017.6.12

It's a Material World!
 ー化学の力で新しい電池を生み出すー

工学研究科・教授 今西 誠之

今西教授の写真

社会を変革する新しい蓄電池

18世紀の産業革命以来、人類は化石燃料とそれから得られる巨大なエネルギーを使いこなすことで工業と経済の飛躍的成長を実現してきました。現代においてもその状況は変わりませんが、エネルギーの源泉たる石油や石炭が有限であることと、発生する二酸化炭素による地球温暖化に自省を促す傾向が生まれています。

具体的にこれらの問題に対処する方法の一つにエネルギーを無駄なく利用することが挙げられます。電気を貯めるという機能をもつ蓄電池はエネルギー運用の自由度を高めることでシステム全体の効率を改善します。また、電池を移動可能とすると空間的・時間的な制約を取り払うことができます。端的な例として携帯電話の普及があります。蓄電池の革新は社会構造の変革をもたらし得るものなのです。中でもリチウムイオン電池は1991年に世界に先駆けて日本で開発された蓄電池です。

リチウムイオン電池の特徴

次世代を担う電池の課題

現在のリチウムイオン電池は非常に優秀な蓄電池ですが、社会からの増大する要求に十分応え切れないところも出てきています。例えば電気自動車の航続距離はガソリンエンジンに遠く及びません。こうした課題を解決するため、より大きなエネルギーを貯蔵できる革新的な次世代電池が強く求められています。私の研究室では精力的に新しい蓄電池の開発を行っています。

※蓄電池を満充電にして走行できる距離

次世代蓄電池の今後

水溶液を用いたリチウム-空気二次電池

空気で発電「リチウム-空気二次電池」

電池とは大きくプラス極、マイナス極、電解質の3つの材料から成り立っており、リチウム-空気二次電池はマイナス極に金属リチウム、プラス極に空気中の酸素を用いる電池です。

電池の開発は特に材料作りが重要で、物質をつくる化学の研究者が活躍する分野でもあります。

紙の計算の上ではリチウム-空気二次電池はリチウムイオン電池の5倍以上のエネルギーを持つことになりますが、実現はそう簡単ではありません。なぜなら金属リチウムは活性が非常に高く、発火する恐れなど、問題点があるためです。そのため我々は金属リチウムの表面を安定化する被覆材料の開発を進めてきました。

我々の研究成果は空気電池以外にも利用可能で、これまでにない蓄電池を数多く生み出すものと期待されます。

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.37』(2017年1月発行)から抜粋したものです】