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よく気が利く農業ロボットの開発

2019.8. 9

よく気が利く農業ロボットの開発

生物資源学研究科・准教授 森尾 吉成

森尾准教授の写真

ロボット車両基地前にて

農業ロボットのための 人工知能を開発

私は、農業ロボットに搭載する人工知能を開発しています。この人工知能が開発できれば、ロボット自身が作業者の動きや作業の流れを理解し、気を利かせながら作業を手伝うことができます。

約20年前、農業を営む父が作業する私に掛けた言葉の「よく気が利くから助かる!」がきっかけで、「自分のように考えて動く農業ロボットを開発しよう!専門とする画像処理を活用すれば、ロボットの目と脳を開発できる!」と思い立ちました。

図:人工知能のシステムの仕組み

画像処理の世界とは

カメラの映像を撮影する部分には、光の強さを電気信号に変える素子(フォトダイオード)が取り付けられており、数百万もの素子が縦と横に規則正しく並んでいます。シアン、マゼンタ、イエローなどのカラーフィルタを素子にかぶせて色情報を取得し、画像を記録します。

数学やアルゴリズム※1を駆使しながらプログラム言語を使って、対象の色、形、模様、位置、距離、姿勢などを認識します。プログラム言語には、C++※2を使っています。

※1:「アルゴリズム」
問題を解くために考案したアイデアを、数式などを使ってコンピュータで解けるように表現し直したもの。
※2:「C++」
英語、ドイツ語といった言語と同じように、プログラミングの世界にも言語が複数あり、C++はその1つです。

図:乳牛の斑紋を使った個体識別
えっくん

過去に開発した代表的な画像処理システム

これまで、 1)乳牛の個体管理の手間を省力化するための黒色と白色の斑紋を使った個体識別システム、 2)単調な花卉(かき)の選別作業を省力化するための切りバラの茎の3次元形状自動計測システム、 3)太陽光発電パネルの微視レベルの品質を評価するためのパネル結晶面クラック(割れ)検出システム、 4)千粒を超える穀粒(こくりゅう)の外観品質を専門家と同レベルで検査するシステムを独自のアルゴリズムを考案することによって開発してきました。

気が利くロボットの開発状況と農業の未来

赤青のカラーマーカ付き作業服を考案し、その服を着た作業者を首振りカメラで自動追跡するシステムを開発しました。

首振りカメラを用いた作業者の追跡

作業者の位置や18種類の作業姿勢が認識でき、さらには、水遣(や)り、播種(はしゅ)、収穫作業をする作業者の動作も認識できます。地図もなく操舵(そうだ)が難しい現場で、ロボットの走行ルートやルート上の自己位置を認識するシステムも開発しています。農業従事者不足が深刻化する現場に、我々の農業ロボットを早く届けたいです!

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.41』(2018年12月発行)から抜粋したものです】