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銀河を取り巻く暗黒物質 ~見えないものを見る観測的アプローチ~

2015.11. 9

銀河を取り巻く暗黒物質 ~見えないものを見る観測的アプローチ~

教育学部・教授 伊藤 信成

伊藤教授の写真

見えないけれどそこに在るもの

「大切なものは目には見えない」フランスの飛行士で小説家のサン=テグジュベリの小説『星の王子さま』の一節です。良好な人間関係の構築には相手の考えや感情など、目に見えないものを大切にすることが不可欠ですが、自然界にも「見えないけれど大切なもの」はあります。例えば、空気は見えないけれど私達にはなくてはならないものです。
私の専門とする天文学では様々な方法で宇宙や天体の観測を行いますが、宇宙にも「見えないけれど大切なもの」があることがこれまでの観測からわかってきました。それが「暗黒物質」です。

説明図:天体の観測方法

暗黒物質とは?

暗黒物質の分布イメージ

私達の目には見えない空気も赤外線を用いると見ることができますが、宇宙には現在の技術ではどのような方法を使っても見ることができない何かが存在することが予測されています。私たちはこれを「暗黒物質」と呼んでいます。暗黒物質は見ることも触ることもできませんが、質量(重さ)を持っており、天体の運動や宇宙空間に広がるガスの分布などから存在を予測することができます。宇宙の構造を形つくる基本的な力は重力であり、その重力の大部分を担っているのがこの暗黒物質であると考えられています。

見えないものをどう探す?

では、暗黒物質はどこにあるのでしょうか?私達の研究室では、銀河と呼ばれる天体を使って暗黒物質の分布を明らかにしようとしています。銀河とは太陽のような恒星が数億から数千億個集まってできている天体です。暗黒物質が銀河を横切ると、その影響を受けて形が変わることが予想されますので、様々な銀河の形を詳細に調べることで銀河の周囲にある暗黒物質を検出できるはずです。見えないものを見えるものを使って調べようという作戦です。もし暗黒物質について解明することができれば、銀河の形成を明らかにすることができるかもしれません。それは、太陽系や地球、ひいては私たち生命の起源の手がかりとなることでしょう。

まだ見ぬ世界を求めて

宇宙のスケールは日常生活と比べると極端に大きいものですが、時間や距離を俯瞰(ふかん)して眺めてみると、ダイナミックに変化する宇宙の姿が見えてきます。我々の住む銀河系、太陽系、そして地球も永遠に同じ姿ではありません。宇宙に目を向けることは、地球自身に眼をむけることでもあります。
宇宙の謎を追い求めるとき、私たちは時間や空間を飛び越えて、何万光年も離れた星々や人知を超えた現象に出会います。日常では決して触れることのないそれらに触れることができる、それが天文学の醍醐味なのだと思います。

伊藤先生のアイデア

【参考】三重大学天文学研究室(Facebook)
 https://www.facebook.com/astromie/

詳しくはFacebook「三重大学天文学研究室へ」

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.34』(2015年7月発行)から抜粋したものです】