〈哲学〉は「驚きの学問」である!!

2015.6. 1

〈哲学〉は「驚きの学問」である!   人文学部・准教授 田中 綾乃

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哲学ってどういう学問?

哲学の意味

挿絵

みなさんは〈哲学〉と聞くと、どのような印象を抱かれるでしょうか?「テツガク?!難しそう!!」と感じる方も多いと思います。しかし、おそらくそれは"哲学"という漢字がもたらすイメージによるものですね。そもそも哲学という言葉は、明治時代にphilosophyから翻訳された造語であり、直訳だと「知を愛する」という意味です。具体的には、普段、私たちが当たり前だと思っていることをもう一度捉え直すことです。当たり前を少しだけ疑ってみることで、私たちの〈ものの見方〉や〈世界の捉え方〉が広がるのです。

私たちが「見る」から世界は「在る」

イラスト:それぞれの木の葉の色

それでは、実際に考えてみましょう。新緑の季節、木の葉は美しい緑色ですが、私たちにとって緑色に見えるのは、果たして木の葉そのものが緑だからでしょうか?例えば、知覚できる色が人間より少ない生き物には、木の葉は白黒などに見えます。逆に、私たちが色として知覚できるのは、可視光線の範囲内のみです。ここから葉が緑色であることは当たり前だ、という常識が覆されるのではないでしょうか。そして、世界はあるがままに〈在る〉のではなく、私たちが〈見ている〉から世界は〈在る〉のだ、と考え直してみることもできます。これは哲学の領域では、「認識論」と呼ばれる分野で、私が専門にしているカント哲学の根本的な思想です。

人間とは何か?

イマヌエル・カント

カントは「私は何を知ることができるのか?」、「私は何をなすべきか?」、「私は何を望むことが許されるのか?」という3つの問いを立て、これらはすべて「人間とは何か?」という問いに集約されると述べています。西洋の近代哲学とは、まさにこの「人間とは何か?」を追求していくことで現代に繋がる思索を生み出してきました。私自身はカントの「認識論」や「美学」を通して、人間の認識能力の一つである「直観」と芸術作品との関係について研究を行いながら、人間存在の深みを探求しています。

世界を鮮やかに

イラスト:カントの認識論

哲学をするには、何も難しいことは必要ありません。「そもそも」 と自らの頭で考え直してみる柔軟な発想力と、世界に対しての新鮮な「驚き」があれば十分です。驚くことができるのは、新たな見方や豊かさの発見ゆえです。常識に凝り固まるのではなく、私とは何か?真とは何か?善とは何か?美とは何か?世界とは何か?人間とは何か?・・・ということを根本的に考え直してみることで、目前にある世界が以前にも増して鮮やかで豊かなものとなるはずです。先人の哲学者たちが生み出した様々な思想に触れながら、自らの考えを深めていく哲学は、実に奥深く魅力的な学問です。ぜひ哲学ワールドを体験してください。

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.30』(2013年7月発行)から抜粋したものです】